「アート×福祉」実践ワークショップが開始
相模原市のアートラボはしもとは2011年より、近隣の美術大学と連携し学生や卒業生たちのアートの実験・育成を含め、地元の学校や商店街とも関わり試行的な取り組みを続けているユニークなアートセンター。http//www.city.sagamihara.kanagawa.jp
この度、ARDAと恊働で「福祉の現状やアートの可能性」を学びながらアートワークショップを企画・実施する8回の研修に参加する学生を公募して開催中です。
第一回<8月21日(日)> “アートX福祉”の取り組み紹介・高齢者への理解
参加する学生は 東京造形大学、女子美術大学、桜美林大学の学生計8人となりました。初回のこの日は今回のプロジェクトの参加者が揃いました。
アートの領域からはARDAとアートラボ・スタッフ、福祉の領域からは、ワークショップの舞台となる相模台ホームの施設長をはじめ6名、さがみリハビリテーション病院から2人のスタッフ。それぞれから今回のプロジェクトへの取り組みや期待が語られました。専門領域の人達に少し圧倒され気味の学生さんたちは参加した動機をそれぞれ発表。ヨーロッパでアートセラピーを体験し、他界した祖父母を思い福祉の現場でアートを活かしたいという学生、現在グループホームでアルバイトをしている学生、環境学を学ぶ男子学生は「芸術がどんな形で福祉に関わってくるのか想像できなかったので興味を持った」とのこと。彼らがどんな結果をだしてくれるのかが楽しみです。
★ ARDA活動について「アーティストと高齢者が出会う時」
ARDA理事長並河から高齢者施設でのアートワークショップについて、目的、アーティスト、コーディネーター、アートコミュニケーターたちの役割、ワークショップがもたらす高齢者の変化や介護士さんたちの言葉等を伝えました。造形・音楽・ダンスのワークショップ場面を映像で紹介し、アーティストと高齢者が出会う時なにが起こるかを感じてもらいました。アーティストと参加者をつなぐARDAのアートコミュニケーターからの現場での体験の話にも関心が集まりました。その後参加者全員が、質問や感想を書き込んだカードを白板に張って共有。「高齢者の方、ひとりひとりがアーティスト”というお話を聞いて、アーティストを含めた私たちは、その“アーティスト”のサポーターなのだと発見できた。」「アートデリバリーで事前に施設スタッフもやることを聞いて改めてアートは一方的ではなく相互的なのだと思った」などのコメントがありました。
★ 高齢者の特性とアートワークショップの環境づくり
さがみリハビリテーション病院スタッフ(作業療法士と言語聴覚士)から、高齢者の特性と疾患・障がいについて、リハビリテーションとは何かについての講義です。
「させるアート」ではなく「するアート」ができる環境づくりが求められていること、その人の強みを生かしてリハビリをすること、経験を聞き、成功体験を重視することに必要性が語られました。
次いで高齢者の気持ちを想像してみる作業として、「年齢を重ねることで苦手になること/得られるもの」を発表。苦手になることは、頭で考えていることが身体的に追いつかないこと。得られるものは豊かな人生経験・苦労が役立つことなど。ワークショップの場で高齢者を人生の大先輩、一人の人間として尊重する態度で接するための基本を学ぶ作業でした。
★ 相陽台ホームの紹介 (施設長及び介護福祉士)
特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービスを併設し訪問介護、居宅介護支援を含む総合的施設。施設長さんから100人程の入所者は必ずしも自分から望んで入所している訳ではなく、心を閉ざしている人も多いことを知らされました。日常のアクティビティの様子をスライドで紹介、高齢者と接することで注意すること①顔の正面から見て声かけ②手をつなぐ時は上からではなく下から支える③ゆっくり話す、等具体的な忠告が、学生さんには貴重なものとなりました。施設長さんからは「わくわくしている」との言葉もあり、福祉サイドからの“アート”に対する期待度の高さ、学生さんたちの挑戦への期待が感じられました。
3つの講義が終了後、すべての参加者が3グループに分かれて話し合い、親しみを深め、意見を交換し、これからの作業への期待が高まった1日でした。(ナ)