高齢者とアートのしあわせな出会いセミナー報告
2月11日、福岡市市民福祉プラザで開催された「高齢者とアートのしあわせな出会いセミナー」は満員御礼、参加者たちとのしあわせな出会いで終了しました。
昨年4月、「アートサポートふくおか」の古賀弥生さんがこの企画を携えてARDAを訪ねてくださった。
セミナーの主催者、古賀さんは、「学生時代に北欧の高齢者施設を訪問した時、個人の希望でアーティストを招いたり介助者の引率で映画館や劇場、美術館へ行って文化芸術を楽しんでいることに感動した。父親の最期は施設で丁寧いなお世話に恵まれたが何かが欠けていた。文化と福祉が同等の関係で歳をとっても文化芸術に自由に触れることのできる社会にしたいと思う。そんな思いで現在、宗像市の文化事業として高齢者施設でアートワークショップを行っている」とご挨拶。
私は基調講演としてARDA活動「高齢者施設へアートデリバリー」について話し、DVDを上映した。新井英夫さんはアーティストが活動で感じることを語ると同時に、高齢者対象のWSを疑似体験できる解説付きミニワークショップで会場を盛り上げた。また、熊本県立劇場の本田恵介さんは劇場からアウトリーチすることの意義ついて「社会参加の機会を開く社会包摂の基盤作りが劇場の役割として求められている。劇場法もできて25年度より福祉分野へアウトリーチ事業を模索中で高齢者施設へも開始したところです。」と話された。
質疑応答、パネルディスカッションは私が一番期待していた時間だった。
このタイトルで来場された方は、どんな思いで参加されたのか?どんな経験をされているのか?なにか今後への糸口でも探れたら~と。
活動を開始してから10余年の集大成とし 平成23年ファイザープログラム:心とからだのヘルスケアに関する市民研究支援で一年間かけて、アーティストによるワークショップを詳細に検証して報告書と普及版のDVD付きのハンドブックを出版した。福祉関係者に理解して頂こうとシンポジウムを開催し多くの参加者を得ましたが、その後、期待していた反応は全く無く。。。私は同じことを繰り返したくなかった。古賀さんからのお誘いは突破口になるかもしれないと密かに思っていた。ところが、会場からの声は「東京から大企業を退職して福岡で音楽を出前するNPO法人を立ち上げて、福祉施設を訪ねて営業したが返事は無かった」という中年男性。「始めたばかりだが、助成金がなければ継続は難しい。今後どうしたらよいのか?」「単なるボランティアとしか見られず、介護士さん達は忙しいので参加しない。」等々、どれも私が困っていることと同じだった。
社会の受け入れ体制が変わらなければ普及は困難、興味をもって協力をしてくださる施設長を探すことしか無いのかもしれない。しかし、本田恵介さんが話されたことは、冒頭の古賀さんの言葉と一致し、インクルーシブ社会への変革を意味すると思う。超高齢社会の現実が意識の変化をもたらしてきたと、改めて感じられたフォーラムでした。<並河 恵美子>