シンポジウムセッション1「アートと高齢者福祉」への質問回答
Session1「アートと高齢者福祉ー生きることの根源につながる活動」を終えて
はじめに」では、ARDA創設理事である並河が、銀座のルナミ画廊を運営する中での国際交流や、エイブルアートなどをきっかけに、アートによって誰もがいきいきと生きられる社会にしたいとNPOを設立した思いと経緯を話しました。
「アートワークショップ・対話型鑑賞の実践者や関心をお持ちの方に、ARDAの始まりやアートデリバリーについて熱心に聞いていただき、参加いただいて、開催できて良かったと思っています。
セッション1では、年齢や体の状態にかかわらず、表現すること・アートを通して心身を動かすことの重要性をアート、地域的つながり、福祉、政策や経済の観点から語り合いました。
これから、ご登壇者やみなさまの意見交換で得た課題やビジョンを検討し、実現に向けて、若い世代と進めていきたいと思います。」(並河)
質問の回答
(当日お答えできなかった質問に回答していきます)
Q1:高齢者の生活とアートとのつながりにAIをはじめとする科学技術の活かし方を、ご参加の皆さまはどのようにお考えでしょうか?
いいところと悪いところがあると思います。介護士の負担を減らすための機械、高齢者とコミュニケーションを取るロボット、便意を知らせるアプリなども進化してきました。AIだけにお世話をされていると、人間的な扱いを受けていると思えなくなるんではないかと思います。負担だったことが効率化できることはいいことですが、任せきりにするのではなく、それこそアート活動のような人間らしさや尊厳を守る人間同士の行う営みは、きちんと選別して、人が行うべきだと思います。(並河)
Q2;高齢者のなかには、アートと無縁で生きてきたと思っている方もいると思います。でも日常のなかで知らず知らずに触れています。例えば高齢者向け施設に活動する時に、最初の説明のなかでどのような言葉を入れたら良いのでしょうか?
「特別なアート」という切り口ではなく、アーティストと自然な出会いを通じて、1日の1つの楽しみとしてはじめています。いつも施設がやっている活動を伺い、親しみを持てるように自然に入っていきます。施設にはボランティアで訪問する人が多いため、「今日はこんなボランティアの人なんだ」と言われてしまうこともあります。ただ、やっていくうちに今日はなんだが違う、いつもより体が動く!ということが起こってきました。(並河)
Q3:高齢者にとって、アートということは抽象的なことという印象が強いのではないでしょうか。しかし実はアートと生活の関連性があります。最初にアートの本質—「日常的に関連性がある」の内容を高齢者に紹介したほうがいいと思います。
その通りだと思います。説明というより、先の回答のように、普段の生活の様子などを伺って自然と活動に入っていきます。アーティストの働きかけで、自然と表現が湧いてくるような流れを作っています。ARDAのアートデリバリーでは、介護士講座を行い、実施前後に話し合って施設職員の方と一緒に作りあげることを大切にしています。施設全体で表現の場を持って、同じ立場で表現活動を行うことで、職員の方・利用者の方それぞれ新たな発見にもつながります。継続的に行うことができると、実際に日常に還元できるものが多いと考えます。(並河)