「畑をリサーチすること」やまとアートシャベル 学校打ち合わせ
「アーツ×ダイアローグ」では、学校コーディネーターが担任の先生と授業実施前に打ち合わせをしています。
学校コーディネーターとは、授業実現のために一連の実務を担当する調整役です。コミュニケーターの「シャベラー」が子どもたちとアートを結ぶ存在だとしたら、学校コーディネーターは学校と対話型鑑賞を結ぶ存在だといえます。
学校との事前打ち合わせでは、まずは学校コーディネーターから活動の意義について説明します。
対話型美術鑑賞では、作品をよくみて考え、お互いの意見を聴き、自分の気持ちや考えを言葉にすることで、「観察力、思考力(論理的思考力や批判的思考力、創造的思考力)、コミュニケーション力」などが育つとされています。
やまとアートシャベルでは、シャベラーから学校コーディネーターになって活躍してくれている方がいます。実際に授業を進行しているシャベラーだからこそ伝えられる、子どもたちの生の反応や活動の魅力をお伝えしています。
活動の意義を共有したあとは、普段のクラスの様子やクラスづくりで大切にしていることを伺い、先生とともに授業のめあてをすりあわせます。また、子どもたちへの関わり方や配慮すべき点について確認します。こうして、事前に打ち合わせで伺ったクラスの様子をシャベラーに共有することで、授業当日の場づくりのヒントにしてもらうのです。
打ち合わせでは、子どもたちをよく知っている先生に鑑賞作品を選んでいただきます。
「うちのクラスはこの作品がいいかも」「〇〇さんが好きそう!」など、クラスの子どもたちの顔を思い浮かべながら選んでいただくのですが、実際に授業してみると、不思議と作品と子どもたちの雰囲気が合っているんです! また授業後に子どもたちから「最後の作品を選んでくれたのは先生なんだ! さすが!」という感想が出ることも。作品選びというかたちで先生方に参加していただくことが、子どもたちの前のめりな鑑賞に繋がっています。
最後に実施会場の空間を確認します。必要な物品は揃っているか? どんなレイアウトにしたら良いか? など、さまざまな視点で会場を下見します。
対話型美術鑑賞にとって、空間はとても大切な要素のひとつです。たとえば鑑賞作品の背景にさまざまな物が置かれていると、子どもたちの意識が散漫になってしまい、作品に集中することができません。その場合は、物を布で隠したり、椅子の配置を変えたりして、対話に適した環境づくりを整えます。
子どもたちにとっては、見慣れた場所である教室が普段とは違うレイアウトになって、作品が並んでいるだけでワクワクするものです。「いつもと違う! なにが始まるんだろう?」という期待感が参加の意欲へと繋がります。
こうして学校打ち合わせで、先生方に活動について理解していただき、協働して授業の準備をしていきます。
対話型美術鑑賞の授業が「畑に種を蒔くこと」だとしたら、先生方との打ち合わせはクラスという「畑」の土質や日照量、降雨量などをリサーチするような作業です。土地のことをよく知っていれば、種の蒔き方を工夫することができます。授業で蒔いた対話型美術鑑賞の種は、子どもたちが大切に育ててくれます。そして、先生方や保護者もいっしょに水やりをし、成長を支えていくのです。
(よっこい)