アートで自己研鑽!? 鑑賞ファシリのための現代アートをみる会レポート
2021年9月から3回シリーズで「鑑賞ファシリテーターのための現代アートをみる会」を開催しました。これは対話型鑑賞ファシリテーター養成講座の修了生をはじめ、ARDAが育成に関わる鑑賞ファシリテーターを対象に、多様なテーマを扱う現代アートと向き合うことで、鑑賞力や感性・知性を磨いてもらうことを目的に企画されたものです。
今回取り上げた展覧会は、東京都美術館で開催された「Wall & Bridges -世界にふれる世界をいきる」。人生の障壁(Wall)を、創作を通じ、橋(Bridge)に変えていった5人の作り手を紹介します。
1日目に行われた展覧会の予習(オンライン上で公式サイトを閲覧しながら、作家の情報をインプットしつつ、主要作品を対話にて鑑賞)を経て、2日目はいよいよ美術館訪問!仲間と会えるのも楽しみです。
まずはひとりでじっくりと鑑賞していくのですが、予習で得た視点や考察を伴う鑑賞は、自ずと深まり方が違います。さながら対話型鑑賞の続きをしているよう。「自分が美しいと思った作品を写真に撮る」というお題のもと、自らの感性を研ぎ澄ませます。後半はカフェに移動し、小グループに分かれて対話の時間。自分が選んだ作品についてお互いに語り合います。
――「参加者間でシナジーが生まれた」 「意見交換が刺激的!」
参加者の声からも分かるように、仲間の視点で作品に出合い直すことで、自分の中から新たなことばが引き出されます。2時間経過しても対話は途切れず、どっぷり濃密な時間となりました。
…そして、2週間後の最終日に向けて出された課題は、「もっと知りたいと思う作家を1人選び、社会・美術・個人の文脈を念頭に調べ、作品や作家について考える」というもの。
いつもの対話型鑑賞では「鑑賞者と共に/1つの作品」に向き合うわけですが、今回は本や過去の図録などを手掛かりに「自分ひとりで/1人の作家」と向き合います。楽しくも苦しい時間ですが、これは「自分で自分を鍛える方法」を身に着けるために必要な道のり。
最終日の発表では、作家と同じように自分で絵を描いてみることで近づこうとした人や、想起した詩を紹介する人もいました。
人生の必然から生まれた表現は“生き様”そのものであり、だからこそアートは尊く感じるのだと思いました。私たち鑑賞ファシリテーターは、アート作品を介し、作り手が捉えた世界に鑑賞者がふれることを媒介するのだと、あらためて実感する機会となりました!
このようにARDAでは、鑑賞ファシリテーターが学び続けるための場づくりや企画も実施しています。(ペコ)