「アートX福祉」実践ワークショップ第2回
第二回<8月26日(金)>“ア−トX福祉”の取り組み紹介
★相陽台ホームの見学・高齢者とのコミュニケーション体験
JR相模線原当麻10時集合、施設のミニバスで相陽台ホームへ。緑豊かで秩父の山々が見えます。通所の方は元気な女性が多く30人中男性は5人、中には認知症状のある方もおられるそうです。特養は85名の方が入所されており、週3回のアクティビティとして手芸サークル、体操グループ、音楽セラピーがあります。車椅子の方がかなりいらっしゃいましたが、スタッフやボランティアさんと一緒に楽しそうに取り組んでおられました。学生さんたちは日頃たくさんの高齢者と接した経験はないこともあり、会話が弾むところまでは行けなかったようです。はじめての高齢者施設の見学では、今まで見たことのない風景でカルチャーショックもあったかもしれません。ちなみにARDAのアートコミュニケーターはいつものとおりすぐに溶け込んでしまい、手芸サークルの作品をプレゼントされました。
見学を終えて午後は、アートラボはしもとで午前中の振り返りです。
学生たちは、感じたことを紙のパーツとクレパスで表現。それぞれのコメントとともに、皆で鑑賞しながら共有しました。それぞれが見て感じたことの表現からその感受性が見てとれます。
施設見学
見学の感想
★「ア−トって使えるの?」鈴木理恵子(女子美術大学:ア−ト・デザイン表現学科ヒーリング表現領域 准教授)~講義とワークショップ~
鈴木恵理子氏は2005年,イギリスでソーシアル・インクルージョン(社会包摂)の現場に出会い、帰国後は重症心身障がい者の施設でアートワークショップを継続しています。特に1997年、トニー・ブレア政権の政策基本方針が人を中心とした地域と国家の再建を基に健康・芸術文化・雇用を連携させた社会変革を行った。その幅広いアート活動に影響を受けた日本で「個がみんなとアートすること」を学生達に分りやすく意識化させる講義でした。また、実際の活動においてア−ティスト・ファシリテーターの役割について、すべての参加者が主役で平等な関係を結ぶ/完成させることが大切であること、参加者があたかも自分でできたように思わせるようにアシストすることなどの基本的な注意もありました。
「みんなと、アートをする」ことをキイワードに前半の講義を終えて、後半は実際に障がい者施設で行ったワークショップを体験しました。『絞って巻いて、不思議な生き物』を作って共有します。その行程は以下のようになります。
1 テーブルの上にブルーシートを敷く
2 様々な種類の端切れ、モール、毛糸、輪ゴム、洗濯バサミ等が置かれる
3 作り方の替え歌を歌う
4 少しハンディキャップを経験するために軍手をはめてなるべく片手を使う
5 自由に造形
6 ペアになって布やモールを交換
7 自分の作った生き物を左隣の人へ、次に3人目、5人目と回す
8 戻ってきたら手を加えマジックで目を付ける
9 名前をつけて、皆で鑑賞
思いがけない不思議なオブジェが並びみな笑顔、共有する喜びが自然と湧きます。
鈴木先生からは、ワークショップ開始前から現場の様子を見ると施設スタッフの意識が変わる、服装も雰囲気作りの一環で、女優・男優になったつもりで〜という忠告もあった。これはとても大切なことで、ARDAでも毎回、気をつけて工夫しています。学生からは、「自分の目指すアートのあるべき姿と「アートをすること」=「あそぶこと」を知って、ストンときた。」「見本通りに完成させることではなく、時間を共有することに目を置いてかなりゆるみを持たせるのが大切だと思った」
「すべての参加者が主役となることが、ひとり一人に心の喜びや楽しさを感じさせる。」「コミュニケーションが取れない重症心身障害がい者に対しての接し方では、私は今まで接したことがなかったので勉強になった。(鈴木先生は1年通って、やっとコミュニケーションが取れ認められるようになったとの話に対して)」「 今まで、内々だったアートの歴史に少しでも変化を与える貴重な機会に出会えた気がする。」などの意見、感想がありました。
その後、企画の足がかりとするフリートークの時間を持ち、ワークショップのアイディアだしは宿題となりました。学生たちは重要なところをしっかり感じて理解しているので、彼らがどんな面白いアイディアを出してきてくれるか、次回が楽しみです。(ナ)
鈴木氏の講義