28年度港区ふれあいアート 中津川浩章さん『音に合わせて絵を描き物語を作ろう』
2016年10月、港区の保育園で中津川浩章さんのワークショップ「音に合わせて線を引き、大きな絵を描いて物語を作ってみよう」を3回にわたって実施しました。
「なんだこれ~!」
部屋の中央に広げられた8メートルもの長い画用紙を見て驚く子どもたち。よく見ると、画用紙の周りには2~3センチほどの小さな鉛筆が置かれています。
「今日は、みんなでたくさんの線を描きましょう!」
1回目の今日は、小さな鉛筆を手に取り、中津川さんの声掛けや音楽に合わせてさまざまな線を描いていきます。
ゆっくりな線・速い線・カクカクした線・ぐるぐるの線…子どもたちはそれぞれいろいろな線を描きます。
あちこち移動してみたり、寝そべってみたり、少し休んでみたりと子どもたちは自分のペースでのびのびと参加していました。自分が描いた線の上に友だちが描いた線が重なり、また別の友達の線が重なって…。
気が付くと紙は鉛筆の線で埋め尽くされ、いつの間にか一つの絵になっていました。子どもたちは、鉛筆で真っ黒になった手足を自慢げに見せてくれました。
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2回目は、鉛筆を筆に持ち替えて、絵の具で線を描いていきます。
まずは1人の子が絵の具の線を引いていきます。紙の上にまっすぐ伸びる絵の具の線を、じっと見守る子どもたち。
続いて3人、5人とだんだん人数が増え、みんなで一緒に描いていきます。最初は絵の具の線の重なりがはっきりと見えていましたが、絵の具がにじんだり垂れたりしてだんだんと色が混じり合い、不思議な色になってきました。
筆で描く楽しさをたっぷり味わった子どもたちは、友だちと色を混ぜてみたり、絵の具を手や足で伸ばしてその感触を楽しんだりなど、それぞれの楽しみ方を見つけて絵の具でたっぷりと遊びました。
いつもは汚れるのを嫌がるAくんも、服や手足が絵の具まみれになっても気にすることなく、友だちと絵の具遊びを楽しむことができました。
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3回目になりました。
「今日は、前回絵の具で作った大きな画面にみんなで『森の世界』を作りましょう。ところで、森の世界には何があるかな?」
中津川さんの投げかけに、子どもたちは想像を膨らませます。
「木がある!」
「カエルもいるよ。」
「じゃあ池もあるかな~。」
「サルとかライオンもいるよ!」
子どもたちの中で森の世界の想像が膨らんできたところで、いよいよ作り始めます。
色紙をみんなで破いて、ばらばらになった破片のかたちから想像し、前回作った絵の具の画面に貼り付けていきます。
キノコ、木、ワニ、カバなどなど…偶然できた紙の形から、子どもたちは様々な森の生き物の姿を想像していました。子どもたちってこんなこともできるんですね、と担任の先生も驚いていました。
また、誰かが作った池に気づいて、魚を付け足したり、水を飲みに来たゾウを作ったりなど、周りの友だちと協力しながら作る姿が見られたことが印象的でした。
今回みんなで一緒に作った作品は、後日、園で行われた発表会の劇中で大道具として使っていただきました。今回のワークショップを通じて、子どもたちは自分自身が楽しむことと同時に、友だちと協力して楽しむことの喜びも感じてくれたのではないかと思います。
(文・写真/マツムラ)
アーティスト・中津川浩章
1958年静岡県生まれ。画家、美術家。「記憶・痕跡・欠損」をテーマに作品制作。国内外で個展、ライブペインティング多数。埼玉県障害者アート展、ビッグ・アイアートプロジェクトなどでアートディレクターを務め、川崎市岡本太郎美術館「岡本太郎とアールブリュット」展キュレーション、東北障がい者アート公募展選考委員ほか多くの活動にたずさわる。バリアフリーのアートスタジオ「エイブルアート芸大」、あらゆる人を対象にしたアートWS、美術史WS、講演などを通じ、アート、福祉、教育、さまざまな分野で社会とアートの関係性を問い直す活動を行う。NPO法人エイブル・アート・ジャパン理事、NPO法人アール・ド・ヴィーヴル理事、一般社団法人Get in touch理事。