[高齢者ケアにおけるアート:国際セミナー2018]報告
ARTS in ELDERCARE SEMINAR 2018 in Singapore aes2018.com.sg
[高齢者ケアにおけるアート:国際セミナー2018]報告
シンガポール・アーツカンシルより招待されて9月6〜7日、ARDAの「高齢者施設へアートデリバリー」活動を始めて海外で話す機会に恵まれた。
急速に高齢化するシンガポールで、6年前より9月を高齢者アート月間と定め「シルバーアート・フエスティバル」を開催、週末に家族でアートを楽しむことを呼びかける国を挙げてのイベント。そのオープニングの国際セミナーでは韓国、英国、シンガポール、日本からスピーカーが登壇。
韓国のシニア福祉センターの所長は「芸術文化教育支援と高齢者福祉が協働して芸術と教育」について美術教師やアーティストへの高齢者向けのアート教育と青少年への啓蒙など、高齢者ケアを支える人材育成の基盤作りを国サイドで行っている先駆的事例を聞くことができた。
メディア・センターのディレクターによると、単なるパソコン教育ではなく創造的な作品作りを高齢者が目指すことを目標にIT教育を行っているという。
英国のengAGEのアーティストは施設に泊まり込んで入所者の様子を見ながら一緒に制作、また認知症対象のソフトを開発してiPadを使って創作する事例を発表、ワークショップも実施。
私は身体感覚を通してアーティストと高齢者との交感が生む「アートデリバリー」活動の意義について映像とパワポで発表した。
帰国後、故蜷川幸男氏が残した種を広げる「世界ゴールド祭」が彩の国さいたまで開催されていた。世界的な高齢社会で「アートで若返ること」が注目されるフェスティバル。参加国の文化関係者によるシンポジウムが開かれ、シンガポールからアーツ・カウンシルのチュア・アイリャン氏も登壇するというので再会。また、ARDAの高齢者アート活動をぜひ見たいと望まれていたので、急遽、杉並区西荻にある桃三ふれあいの家の協力で、竹中幸子さんのダンスワークッショップをプレゼンした。
終了後に社会背景の異なるアート活動に触れながら意見交換ができて、意義ある時間となった。
偶然にもシンガポールと日本で高齢者アート祭が同時期に開催され「高齢化とアート」の課題を共有した。遅々とした歩みで、やっとここまで来たと思えるARDA活動。しかし、シンガポールのように高齢者へのアート活動を支える公的機関もなく、介護現場ではアートが入る隙間もない日本の現状で、「人間にとって何が幸せなのか?」を求めつつ前進したいと願う心境です。(並河)